2004/07/12 卒論指導
010149k 松本千穂
T.各法人がどのような活動を行っているのか?
JRAが助成を行っている各社団・財団法人の活動内容を調査してみたところ、ほぼ、どの団体も農林水産省管轄下の法人であり、主に畜産業の振興のため活動をしているようであった。例えば、「財団法人 畜産近代化リース協会」は、個人利用のための畜産関係機械施設の貸付け等を通じて、畜産経営の近代化と体質強化を図るとともに、乗馬の普及を推進することを目的として、昭和50年6月に地方競馬全国協会(NRA)及び日本中央競馬会(JRA)の出資により設立されたという。最近では、年間100億円を超える貸付けを行い、畜産経営の近代化、乗馬の普及及び地方競馬の発展のため活動をしている。
また、「社団法人 日本畜産施設機械協会」は、畜産経営の安定とその近代化を図るため、畜産経営における施設機械のシステム化等による高度利用を推進し、日本の畜産業の健全な発展に寄与することを目的とし、運営されている。
(補足)
社団法人とは、法律上の権利・義務の主体として認められた社団であり、民法によって定められた公益法人の一種である。不特定多数の公益を目的とし、組織、意志を持ち、社会における一個の構成分子として認識され得る人の集合体(団体)である。「定款」(会則)に基づき運営され、会員を社員と規定し、社員(会員)は不特定多数の利益を行為によって還元する。
財団法人とは、寄付された財産が中心となって成立している法人である。不特定多数の公益を目的とし、搬出、結合されている財産の集合体である。社団法人の定款にあたる「寄付行為」(行為そのものを指す語ではない)に基づき運営がなされる。財団法人は、財産が中心となっているので社団法人と違い社員はない。そのため、財産の管理者が、不特定多数の利益を、財産の運用によって生ずる収入および恒常的な賛助金によって還元するのである。また、寄付された財産であるから、寄付をした者が財産の返還を求めることはできない。解散時には、寄付行為の定めのとおり、国等や同種の医療法人などに財産を提供することになる。
まとめると、社団法人は社員による行為そのものが公益活動であることに対し、財団は財産の運用が公益活動である。
そもそも法人とは、法律により権利能力を与えられ、社会活動の主体となることが承認されるもので、その活動は法人に帰属する機関(総会・代議員会・理事会・委員会等)により執行される。法人は、特定の者の利益を追求する非公益法人と、不特定多数の者の利益を追求する公益法人に分類され、さらに非公益法人、公益法人ともに非営利目的と営利目的に分類される。非営利目的の公益法人は、社団法人、財団法人、学校法人、社会福祉法人、宗教法人、医療法人に分類されている。
U.JRA歴代理事長の経歴
現理事長は、元農林水産省事務次官の高橋政行氏(62歳)である。彼は、他にも財団法人日本環境協会の理 事(非常勤)を務めるなどしている。高橋氏は、1999年9月12日、13代目となるJRA理事長に正式に就任した。任期は3年であったが、2002年9月12日に再任、現在2期目となる。高橋JRA理事長は岐阜県出身。東大法学部を卒業後、農水省に入り、食糧庁長官、農水事務次官を経て、1998年に同省を退職した。前理事長は浜口義曠氏で元農林事務次官、東大卒である。浜口氏から高橋氏への交代は唐突なものだったが、背後にはJRAと畜産行政の間合いという問題があったようだ。競馬の建前上の存在意義が、競馬法にも規定されているよう「畜産振興」とされていたこともあり、それ以前のJRAは畜産行政と一体で進んできた。だが、浜口氏は農水省時代に、旧畜産局との縁が薄く、人事面などで独自路線を進めた。その結果、農水省との間にすき間風が吹き、交代時期が早まったようだ。ここにも、農水省の影響力を垣間見える。
高橋氏が理事長に就任し、ファンサービス重視の改革が行われてきているようにも感じる。実質2000年からが高橋氏が中心となった運営となるわけだが、その年にJRAは、「20世紀の名馬大投票〜あなたが選ぶ20世紀の名馬〜」というファン参加型のキャンペーンを打ち出している。これは、20世紀の名馬を、ファン投票という形で選ぼうというものであった。総投票数は548,845票。かなりの投票数が集まり、後に、この投票結果を反映して、ビデオが作られたが、ファンに景品などのサービスはなかった。2001年のキャンペーン、キャラクターは『ナイティナイン』である。設定としては岡村隆史がジョッキー、矢部浩之が競馬記者に扮し、「ジョッキーのことを知ると競馬がもっと楽しくなる」をテーマにした。実際に、「Go
JRA Jockey」というキャンペーンも展開。前年とは異なり、自分が応援するジョッキーを決め、1000円を支払うと、会員証や写真が送られてくるという特典付であった。このキャンペーンには、7〜8万人が応募したという。
更に2002年は小林薫をはじめ、永瀬正敏、妻夫木聡の3人のタレント出演のCMを展開。キャンペーンスローガンは「GOOD LUCK!」と銘打った。これまでのイメージ広告と違い、「賭け事としての競馬」を広告制作のメーンテーマとして、競馬の遊び、楽しみをファンにアピールしたのが特徴である。また、前年と同じように特典付のキャンペーンも行い、今回は騎手ではなく馬を応援するものへと変わった。
そして、2003年、2004年とCMキャラクターに起用されたのは明石家さんまである。スローガンは「サプライズ!」競馬でしか味わえない“驚き”“感動”を存分に提供してまいりたいというのが設定理由だそうだ。このキャンペーンでも、前年と同じように馬を応援し、特典がもらえる「マイホースグランプリ」を実施している。2004年の特典は、手帳と会員証、会員限定Webページである。自分が応援する馬が勝利すれば、ポイントが与えられ、順位が変動する事になっており、レース結果にファンは馬券とは関係のないところで一喜一憂できるのである。
V.特殊法人改革・財政
日本中央競馬会及び、地方競馬全国協会は特殊法人であり、小泉内閣の掲げた「聖域なき改革」の特殊法人改革の網にもちろんかかった。しかし、日本中央競馬会及び、地方競馬全国協会についての措置は以下のようになった。
中央競馬協会【助成金交付事業】
○助成対象の重点項目及びその終了要件の明確な設定、その後の社会経済情勢の変化に即応した適切な見直しを行い、効果的な助成事業の実施を図る。
○国、他の特殊法人又は地方公共団体の行う事業との整合性をとりつつ、効率的・効果的に事業を実施するため、基準を更に明確化する。
○助成金交付事業について、交付先及び交付額を含め積極的な情報開示を行う。
○助成金交付の趣旨・目的・責任の明確化の観点から、助成先における補助金交付事業については、当該助成先を経由したほうが合理的・効率的であることが明らかな場合に限定する。
【中央競馬関係事業】
○管理経費・競走事業費の削減など更なる事業の効率化を図る。その一環として、公正確保と両立させつつ、一般競争入札等の範囲を大幅に拡大するとともに、関係会社等に対する委託費等を削減する。
●当面特殊法人とするが、集中改革期間内に組織の見直しを検討し、結論を得る。
地方競馬全国協会【助成金交付事業】
○助成対象の重点項目及びその終了要件の明確な設定、その後の社会経済情勢の変化に即応した適切な見直しを行い、効果的な助成事業の実施を図る。
○国、他の特殊法人又は地方公共団体の行う事業との整合性をとりつつ、効率的・効果的に事業を実施するため、基準を更に明確化する。
○助成金交付事業について、交付先及び交付額を含め積極的な情報開示を行う。
【地方競馬関係事業】
○管理経費の削減など更なる事業の効率化を図る。
●当面特殊法人とするが、集中改革期間内に組織の見直しを検討し、結論を得る。
当分は、特殊法人とすると決定をしたわけだが、以下のような記事が最近出た。
公営競技法人の組織見直し、来年度末までに検討
政府は9日、競輪、競艇などの公営競技法人の組織見直しに着手した。特殊法人等改革推進本部参与会議が同日行った意見聴取で、国土交通省は所管する日本船舶振興会(競艇)について、経済産業省は日本自転車振興会(競輪)と日本小型自動車振興会(オートレース)について、それぞれ「2005年度末までに検討する」と回答した。農水省も所管する日本中央競馬会と地方競馬全国協会の組織見直しを検討する、との回答をすでに参与会議に示している。今後は5法人の独立行政法人化など、具体的な組織の在り方が焦点になる。独立行政法人化によって、各法人が収益の一部で実施している助成金事業の効率性が高まることが期待されている。一方、各法人が行っている「賭け事」という業務の性格上、国からの独立性が高まることは、好ましくないとの指摘もある。(2004 7月10日読売新聞)
競馬というギャンブル性を持つ事業のため、国の管理を離れる事に懸念はあるものの、特殊法人改革の手は確実に迫ってきているようである。また、以下のような新聞記事も掲載された。
8県が馬券の委託料10%以上要求
自治体などが主催する地方競馬を抱える群馬、高知など8県は29日、中央競馬会(JRA)と地方競馬の馬券相互販売を認めた改正競馬法に関連して、JRAの馬券を地方競馬が販売する際、地方競馬側に支払われる委託料を馬券収入の10%以上にするよう求める要望書を農水省とJRAに提出した。要望したのは2県のほか岩手、栃木、石川、岐阜、愛知、佐賀の各県。
要望書は「(法律の規定だけでは)経営改善の将来展望を得られない」と指摘。「法改正で収益改善が実際に進むよう、国やJRA、地方競馬主催者が委託料について何らかの取り決めをすべきだ」(群馬県担当者)としている。 (2004年6月30日 日刊スポーツ)
2004年6月3日に衆議院で可決した、改正競馬法によって、「(競馬の実施に関する事務の委託)第3条の2 日本中央競馬会は、政令で定めるところにより、競馬の実施に関する事務を都道府県、市町村又は私人に委託することができる。」という項目ができた。この項目の追加によって、地方競馬でも、JRAの馬券を購入する事ができるようになったのだが、その際の委託料に関しての記載がないため、明確な取り決めを作ろうというのが上記記事の内容である。北関東2県が参加しているこの要望に、南関東競馬(大井・船橋・川崎)は参加していない。南関東競馬においては、大井を中心にある程度の集客力を持ち切迫した状態ではないためだと考えられる。
参考URL
http://sudachi.where-i.net/umatown/k-law/keibahou16.html(改正競馬法解説)
http://www.jrl.jrao.ne.jp/(財団法人 全国競馬・畜産振興会)
http://www.jra.go.jp/(日本中央競馬会)
http://www.keiba.go.jp/(地方競馬全国協会)
http://www.maff.go.jp/www/counsil/counsil_cont/seisan/keiba/1/5-4.pdf(特殊法人整理合理化計画)
http://allabout.co.jp/entertainment/horserace/(all
about Japan 競馬)
http://www.anesth.or.jp/about/corporatejuridical.html(日本麻酔科学会)